訪問買取/訪問購入/押し買いの撃退はクーリングオフ!

近年、高齢者の増加や金相場の高騰という社会的背景もあり、買取業者が個人宅に飛び込みで赴き、強引に貴金属類を買い取るというトラブルが急増しています。これらのトラブルは一般的に「訪問買取」「訪問購入」または「押し買い」等と呼ばれ、社会的な問題となっております。これらの状況を踏まえ、改正特定商取引法が施行され、買取業者に対する規制が課されています。
このページでは、まず事業者に対する規制内容をお伝えします。下記の規制内容に反する行為を行った事業者は法律違反という事になります。また、事業者に対するクーリングオフの通知方法についても後述します。

訪問買取・訪問購入を行う事業者に対する規制内容

契約の申込みの撤回又は契約の解除(クーリング・オフ制度)(第58条の14)

訪問購入の際、売買契約の相手方が契約を申し込んだり、締結したりした場合でも、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、お客様は事業者に対して、書面又は電磁的記録により申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)をできます。
なお、事業者が、クーリング・オフに関する事項につき事実と違うことを告げたり威迫したりすることによって、お客様が誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合には、上記期間を経過していてもお客様はクーリング・オフをすることができます(クーリング・オフを行う際には、後々のトラブルを避けるためにも、書面の場合には特定記録郵便、書留、内容証明郵便等で行うことが薦められます。また、電磁的記録の場合には、例えば、電子メールであれば送信したメールを保存しておくこと、ウェブサイトのクーリング・オフ専用フォーム等であれば画面のスクリーンショットを残しておくことなど、証拠を保存しておくことが望ましいと考えられます。)。

クーリング・オフを行った場合、相手方は、既に物品を事業者に引き渡していたり、代金を受け取っている場合には、事業者の負担によって、物品を返却してもらったり、代金を返却することができます。代金の利息を返却する必要はありません。また、お客様は損害賠償や違約金を支払う必要もありません

クーリングオフとは無条件解約です。違約金や損害賠償、送料・手数料等を請求することは法律違反です。

禁止行為(法第58条の10)

特定商取引法は、訪問購入において以下のような不当な行為を禁止しています。違法行為を行う事業者の大半は、以下のいずれかの場合に当てはまります。

  • 契約の締結について勧誘を行う際、又は契約の申込みの撤回(契約の解除)を妨げるために、事実と違うことを告げること
  • 契約の締結について勧誘を行う際、故意に事実を告げないこと
  • 契約を締結させ、又は契約の申込みの撤回(契約の解除)を妨げるために、相手を威迫して困惑させること
  • 契約の対象となる物品の引渡しを受けるため、引渡し時期その他物品の引渡しに関する重要な事項について、故意に事実を告げない、事実と違うことを告げる、又は相手を威迫して困惑させること。

事業者の氏名等の明示(法第58条の5)

事業者は、訪問購入をしようとするときは、勧誘に先立って、相手方に対して以下のことを告げなければなりません。

  • 事業者の氏名(名称)
  • 契約の締結について勧誘をする目的であること
  • 購入しようとする物品の種類

事業者の名前を偽ったり、購入しようとする物品の種類を偽ってはいけません。単に「不用品の買取」だけでは目的を明示したとは言えないでしょう。

不招請勧誘の禁止(法第58条の6第1項)

事業者は、訪問購入に係る売買契約の締結についての勧誘の要請をしていない者に対し、相手方の自宅等で売買契約の締結について勧誘をし、又は勧誘を受ける意思の有無を確認してはいけません。

お客様から査定の依頼があれば問題ありません。しかし、いわゆる飛込み勧誘・押し買い行為は全て違法行為となります。
また、査定を超えて勧誘を行うことは、法に抵触することになります。つまり、最初は「いらなくなった服や着物の買取をする」といっていたのに「貴金属はありませんか?」と追加で勧誘をすることはできません。
これらの業者対策としては、とにかくインターホン越しにきっぱりと断り、絶対に家にあげないことです。執拗であると感じたら遠慮・躊躇なくすぐに警察署へ通報しましょう。

再勧誘の禁止等(法第58条の6第2項、第3項)

事業者は、訪問購入をしようとするときは、勧誘に先立って相手方に勧誘を受ける意思があることを確認しなければなりません。また、相手方が契約締結の意思がないことを示したときには、その訪問時においてそのまま勧誘を継続することや、その後改めて勧誘することが禁止されています。

お客様が「ありません」と言っているにもかかわらず、それでもなお「貴金属はないか」と勧誘するのは違法行為です。一度でもお客様が拒絶の意思を示せば、事業者は撤退しなければならないのです。

書面の交付(法第58条の7、法第58条の8)

事業者は、契約の申込みを受けたとき又は契約を締結したときには、以下の事項を記載した書面を相手方に渡さなければなりません。

  • 物品の種類
  • 物品の購入価格
  • 代金の支払時期、方法
  • 物品の引渡時期、方法
  • 契約の申込みの撤回(契約の解除)に関する事項
  • 物品の引渡しの拒絶(法第58条の15)に関する事項
  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
  • 契約の申込み又は締結を担当した者の氏名
  • 契約の申込み又は締結の年月日
  • 物品名
  • 物品の特徴
  • 物品又はその附属品に商標、製造者名若しくは販売者名の記載があるとき又は型式があるときは、当該商標、製造者名若しくは販売者名又は型式
  • 契約の解除に関する定めがあるときには、その内容
  • そのほか特約があるときには、その内容

もし事業者が売買契約書等の書面を交付しなかった場合は、そもそも取引が成立していなかったものとみなされ、いつでもお客様側からクーリングオフが出来る状態となります。
このほか、「売買契約書の書面をよく読むべきこと」と、「クーリング・オフの事項」、「物品の引渡しの拒絶(法第58条の15)に関する事項」について、赤枠の中に赤字で記載されなければなりません。さらに、書面の字及び数字の大きさは8ポイント(官報の字の大きさ)以上であることが必要です。読めないような小さい字で書く事は法令要件を満たした契約書とは言えません。

第三者への物品の引渡しについての契約の相手方に対する通知(法第58条の11)

事業者は、契約の相手方から物品の引渡しを受けた後、クーリング・オフ期間内に第三者に当該物品を引き渡したときは、以下の事項を、遅滞なく、相手方(お客様)に通知しなければなりません。

  • 第三者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
  • 物品を第三者に引き渡した年月日
  • 物品の種類
  • 物品名
  • 物品の特徴
  • 物品又はその附属品に商標、製造者名若しくは販売者名の記載があるとき又は型式があるときは、当該商標、製造者名若しくは販売者名又は型式
  • その他相手方が第三者への物品の引渡しの状況を知るために参考となるべき事項

事業者が物品を引き渡した第三者への通知(第58条の11の2)

事業者は、契約の相手方から物品の引渡しを受けた後、クーリング・オフ期間内に第三者に当該物品を引き渡すときは、以下の事項を、施行規則の様式第5又は様式第6による書面にて、第三者に通知しなければなりません。

  • 第三者に引き渡した物品が訪問購入の契約の相手方から引渡しを受けた物品であること
  • 相手方がクーリング・オフを行うことができること
  • 相手方がクーリング・オフできる期間に関する事項
  • 事業者が相手方に対して法第58条の8の書面を交付した年月日
  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
  • 事業者が物品を第三者に引き渡す年月日
  • 物品の種類
  • 物品名
  • 物品の特徴
  • 物品又はその附属品に商標、製造者名若しくは販売者名の記載があるとき又は型式があるときは、当該商標、製造者名若しくは販売者名又は型式

※既に相手方がクーリング・オフを実行している場合は、当該事実並びに上記1及び5~10の事項を書面に記載する。

お客様がクーリング・オフを実行した場合、契約解除の効果は第三者に及ぶことになります(ただし、第三者がクーリング・オフされる可能性があったことについて善意かつ無過失であった場合を除く)。
仮にクーリングオフ期間内に事業者が物品を第三者に引き渡した場合は、事業者はお客様に通知しなければならないとともに、第三者にも通知しなければなりません。

原則として全ての商品が規制の対象となりますが、下記の商品は例外的に規制対象外となります。
・自動車(二輪を除く)
・家電類(携行が容易なものを除く)
・家具
・書籍
・有価証券
・レコードプレーヤー用レコード及び磁気的方法又は光学的方法により、音・映像またはプログラムを記録したもの

違法行為のまとめと事業者への処分・罰則・差し止め請求・相談窓口

事業者の違法行為まとめ

  • 飛込み勧誘・押し買い行為そのもの
  • 故意に事実を告げない、事実と違うことを告げる、又は相手を威迫して困惑させること
  • 契約解除の際に違約金や損害賠償、送料・手数料等を請求すること
  • 事業者の名前を偽ったり、購入しようとする物品の種類を偽ること
  • 査定を超えて勧誘を行うこと
  • お客様がが契約締結の意思がないことを示したにもかかわらず、その訪問時においてそのまま勧誘を継続することや、その後改めて勧誘すること
  • クーリングオフ期間中にお客様及び第三者に何らの通知もせずに商品を第三者に引き渡すこと

上記の行為を行った事業者は全て違法!

行政処分・罰則

上記のような行政規制に違反した事業者は、業務改善の指示(法第58条の12第1項)や業務停止命令(法第58条の13第1項前段)、役員等の業務禁止命令(法第58条の13の2第1項)等の行政処分の対象となるほか、一部は罰則の対象にもなります。

事業者の行為の差止請求(法第58条の24)

事業者が以下の行為を不特定かつ多数の者に現に行い、又は行うおそれがあるときは、適格消費者団体は、事業者に対し行為の停止若しくは予防、その他の必要な措置をとることを請求できます。

  • 契約の締結について勧誘を行う際、又は契約の申込みの撤回(契約の解除)を妨げるために、事実と違うことを告げる行為
  • 契約の締結について勧誘を行う際、故意に事実を告げない行為
  • 契約を締結させ、又は契約の申込みの撤回(契約の解除)を妨げるため、威迫して困惑させる行為
  • 物品の引渡しを受けるため、物品の引渡し時期その他物品の引渡しに関する重要な事項について、故意に事実を告げない、事実と違うことを告げる、又は相手を威迫して困惑させること
  • 消費者に不利な特約、契約解除に伴い損害賠償額の制限に反する特約を含む契約の締結行為

何かお困りのことがありましたらお近くの消費者センターまたは「188」消費者ホットラインにお問い合わせください。また、悪質な場合は最寄りの警察署の生活安全課にご相談下さい。

訪問買取業者に対する内容証明郵便・はがき等書面による通知方法

突然の訪問買取・出張買取の際に売却してしまった商品を取り戻すための制度を「クーリングオフ」といいます。出張買取のクーリングオフ適用期間は契約書面を発行した日(取引成立日)から8日間とされています。その間であれば無条件で契約申し込みの撤回・契約解除を行い、売却した商品を取り戻すことができます。具体的には取引の相手方に書面による通知をする必要があります。しかし、いざ書こうと思ってもどのように書けばいいのかわからない方も多いかと思います。
そこで、行政書士リーガルプラザでは訪問買取業者に対する内容証明郵便・はがき等書面によるクーリングオフ通知方法を公開いたします。ぜひご参考にしていただければと思います。また、下記の書面による通知とともに電話でも通知するとより効果的かと思います。

はがき

・特定記録、簡易書留などで発送します。
・発送前に必ずコピーをとってください。

内容証明郵便

・内容証明郵便はどの用紙でも構いませんが、「1行の文字数、1列の文字数に制限があること」には注意してください。縦書き、横書きいずれでも、「1行20字以内、1枚26行以内であること」が条件です。
・内容文書3通(2通はコピー可)を作成し、郵便局へ提出します。
・印鑑を必ず忘れないようにしてください。